ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 思わず本音が漏れてしまった。
 ポカンとする陽生先輩に、私は慌てて言い訳する。


「あっいやその……!私陽生先輩に憧れてて……!」

「え?」


 言い訳どころか、思いっきり本音が出てしまった。


「……私陽生先輩の演技が好きで、ずっとすごいなって思ってたんです」


 変な気持ちではない、純粋な憧れ。言わばファンとしての気持ちなのだ。


「そう!陽生先輩は私の推しなんです!」


 自分でも何を言っているのだろうと思った。
 案の定陽生先輩は面食らった表情をしていたが、やがて声を上げて笑い出す。


「そんなこと言われたの初めてだ……!」


 初めて見た陽生先輩の素の笑顔はちょっと幼くてかわいくて、胸がキュンとした。


加賀美(かがみ)さんだっけ?」
「は、はい!加賀美(かがみ)(あかり)ですっ!」
「ありがとう、加賀美さん。すごく嬉しいよ」


 目を細めてはにかむその表情に、私の心はきゅうっと締め付けられた。
 この人のことが、もっと知りたいと思った。

 それから私たちはよく話すようになった。
 話すと言ってもサークル中は活動が別なので、終わった後の陽生先輩の自主練に付き合わせてもらったり、一緒に帰ったり。
 好きな映画やドラマや小説の話で盛り上がり、映画デートに誘ってもらった時は嬉しかった。


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