ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。

一筋の月あかり side.日華



 他の女子大から友達と一緒に入ってきたあかりは、大人しく決して目立つタイプではなかった。
 如何にも友達にくっついて来ました、というような自己主張の薄いタイプ。だけど男に慣れてなさそうな純朴さが、同じサークルの男たちにはウケていた。

 俺も最初はかわいいな、くらいにしか思っていなかった。
 飲み会で同期に絡まれているところを助けたら、まさかの真っ直ぐな瞳で「推しです」と言われた。

 愛想がなくて口下手で女性と話すのも苦手だと自負していただけに、そんな風に言われるとは思っていなかった。

 それから、何となくあかりと話すようになり、彼女の意外な一面を知っていく。

 映画や小説の好みが似ていること、誰よりも先に来て舞台準備等裏方の仕事を頑張っているところ、料理上手なところ、意外にも頑固なところ。


「いつも払っていただいているんですから、今日は私に払わせてください」


 こういう時のあかりは絶対に譲らない。
 ちゃんと自分を持っていて、人に流されないところも魅力的だと思った。

 あかりと一緒にいると心が落ち着き、温かくなる。あかりの前では自然と笑える。
 あかりにとっても自分がそういう存在であって欲しいと願った。


「あかり、さっき1年と何話してたの?」
「小道具の場所を聞かれただけです」
「本当にそれだけ?あかりに気があるんじゃないの?」
「ないですよ!……ちゃんと彼氏がいるって言ってますから」


 引退してからも、あかりが心配で何度かサークルに顔を出した。
 あかりに男が寄り付くんじゃないかと気が気でなかった。


「……今日、家に来ない?」
「昨日も行きましたよ……?」
「今日も来てよ」
「っ、はい……」


――かわいくて愛おしくて頭がおかしくなりそうだ。


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