ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
もっと俳優として成長して、男としても大きくなって、いつかあかりにプロポーズをする。
当時の俺はそれしか考えていなかった。
仕事が忙しくなるけど充実もしていて、ちゃんとあかりのことを見れていなかったと思う。
3年前、突然あかりがいなくなるなんて思ってもいなかった。
「あかりっ!あかり!!どうして……っ」
あかりは俺の前から姿を消した。
SNSは全部消されていたし、電話番号も繋がらない。
サークル仲間に連絡してみたが、誰もあかりの新しい連絡先を知らなかった。
「なんで……」
当時はとにかく追い詰めた。自分の何がいけなかったんだろう?何があかりにこうさせてしまったんだろう?
思えば、最後の夜はあかりから誘った。あかりから誘ってくれたのは、あの夜が初めてだった。
そのことに浮かれていた自分は本当にバカだ。
思い返してみれば、あかりの様子がいつもと違った。自分から誘ってきたこともそうだが、避妊を拒むことなんてなかった。
安全日だというあかりの言葉を信じてしまったが、そもそもあんなことを言うなんて……。
多分何か事情があったのだと思う。でなければ、あかりが何も言わずに姿を消したりしない。
でも、情けないことに何の心当たりもない。