ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


「……俺から言おうと思ってたのにな」


 その言葉に聞き返す間もなく、抱きしめられてしまう。
 初めて0距離で近づいた先輩は、温かくて良い匂いがして狂おしい程ドキドキした。


「好きだよ、あかり。俺の彼女になってください」


 嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなかった。
 子どもみたいにボロボロ泣く私の頬を優しく撫で、チュッと額にキスされる。

 びっくりして固まってしまった私を見つめて微笑みながら、今度は唇に唇を重ねた。
 ファーストキスは少しだけしょっぱかった。

 その後初めて先輩の家に行き、何度も抱きしめ合って何度もキスした。
 交際経験のない初心な私は、何もかもが初めて。先輩はいつも優しく包み込んでリードしてくれた。


「……っ、せんぱ……っ」

「あかり、名前で呼んで」

「……っ、にちか、せんぱい……」

「先輩はいらない」

「……日華さん」

「ふっ、かわいいからまあいっか」


 先輩……いや、日華さんはミステリアスだなんて言われているけど、私の前ではよく笑ってくれる。
 声をあげて屈託なく笑ったり、優しく微笑みかけてくれたり、情欲激らせた色っぽい笑みを向けたり――……


「あかり、愛してる」


 そしていつでも私に対し、溢れるばかりの愛をくれる。
 こんな彼を知っているのは、きっと世界で私だけ。嬉しくて幸せで、日華さんがいてくれたら他に何もいらなかった。

 ずっと一緒にいられると信じていた。


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