ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
顔を上げて見つめた社長の表情は、やはり穏やかなものだった。
「今年の日本マカデミー賞で主演男優賞を受賞するんだ」
安易な条件だとは思っていなかったが、求められたハードルは非常に高いものだった。
「世間が認める俳優になれたなら、君が結婚しようが子どもがいようが関係ない。むしろプラスになるかもね。なかなかの純愛ストーリーだし」
「社長……」
「それと、君が条件を満たすまでは別々に生活してもらう。会うのは月に一度のみだ」
「っ!」
あかりと星來ちゃんに会えるのは、月に一度のみ……。
「もちろん、会う場所も事務所の管理下だ。そうだな、水川にも同行してもらおうか。
彼女たちにはきちんと住む場所を与えて、生活は保証する。金城のしたことは日華と事務所のためとはいえ、一人の女性の人生を狂わせているからね。
支援する義務はあるだろう」
「……。」
金城さんは黙って顔を背ける。
「どう?日華。できるかい?」
「やります」
迷いなどなかった。社長の目を見て、はっきりと伝えた。
「やり遂げてみせます。主演男優賞も必ず受賞してみせます」
「そう、期待してるよ」
社長は柔らかく微笑む。
日本マカデミー賞主演男優賞、絶対に獲ってみせる。あかりと星來ちゃんのためなら、何だってする。必ず二人を幸せにすると誓った。