ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 総務部の部長さんが話題を変えてくれた。


「そういえば、加賀美さんは火浦くんの紹介だそうですね」

「あ、はい。実は幼馴染で、東京に戻ってきた時に会ってこちらを紹介していただいたんです」

「えーー!?火浦さんってあの火浦さん!?」


 春日井さんがやけに反応する。少し興奮気味に私を見つめた。


「京都から超イケメンエリートが来たって社内で話題だったんですよ!」

「そ、そうなんですか?」

「火浦くんは独創的で面白い建築を造ると評判でねぇ。とても期待されてるんだよ」


 すごいな恭ちゃん……。
 面接の時もすごく聞かれたけど、期待されてるんだ。

 恭ちゃんのために私もしっかりやろう。あの火浦さんが連れてきたのに使えない子だって思われたら、恭ちゃんの評判にも響くだろうし。

 ランチ会は和気藹々と終わり、午後から業務を教えてもらいながら取り組んでいく。幸いずっと事務をやっていたのでPCの基本スキルはあるから、案外スムーズに覚えられた。


「加賀美さん覚えが早くて助かるなぁ。明日もよろしくね」

「はい、よろしくお願いします。本日はありがとうございました。お先に失礼させていただきます」


 総務部初日はあっという間に終わった。これから急いで星來のお迎えに行く。


< 96 / 195 >

この作品をシェア

pagetop