ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
総務部の部長さんが話題を変えてくれた。
「そういえば、加賀美さんは火浦くんの紹介だそうですね」
「あ、はい。実は幼馴染で、東京に戻ってきた時に会ってこちらを紹介していただいたんです」
「えーー!?火浦さんってあの火浦さん!?」
春日井さんがやけに反応する。少し興奮気味に私を見つめた。
「京都から超イケメンエリートが来たって社内で話題だったんですよ!」
「そ、そうなんですか?」
「火浦くんは独創的で面白い建築を造ると評判でねぇ。とても期待されてるんだよ」
すごいな恭ちゃん……。
面接の時もすごく聞かれたけど、期待されてるんだ。
恭ちゃんのために私もしっかりやろう。あの火浦さんが連れてきたのに使えない子だって思われたら、恭ちゃんの評判にも響くだろうし。
ランチ会は和気藹々と終わり、午後から業務を教えてもらいながら取り組んでいく。幸いずっと事務をやっていたのでPCの基本スキルはあるから、案外スムーズに覚えられた。
「加賀美さん覚えが早くて助かるなぁ。明日もよろしくね」
「はい、よろしくお願いします。本日はありがとうございました。お先に失礼させていただきます」
総務部初日はあっという間に終わった。これから急いで星來のお迎えに行く。