孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない

　電車の揺れに合わせて頭が揺れ、肩から胸のほうにずり落ちる様子にわわっと内心で慌てた。このままじゃ膝枕になっちゃう。というか、本当に起きないなこの人。

　どうしたもんかな、と思っていると、ふいに耳障りなブレーキ音が響いて車内が大きく揺れた。立っている人たちが一斉に同じ方向によろめき、私にもたれていた人も波打つようにガクンと揺れる。

「停止信号です。しばらくお待ちください――」

　アナウンスが流れてざわめきかけた車内が静まると、私にかかっていた重みがわずかに軽くなった。揺れの衝撃で私の膝に着くくらい体を折り曲げていたサラリーマンが、ゆっくり身を起こしている。

「あ、起きました？」

　きれいな顔にうつろな表情を浮かべる彼に、笑いかけた。

「よかった。私、次で降りるんですけど、よく眠っていらしたから」

　その人はぽかんと私を見た。ぼんやりしていた顔が次第に怪訝そうに曇り、凛々しい眉が中央に寄っていく。もしかすると外国の人で、私の言葉が理解できないのかなと思った。そう思うことが自然なくらい、彼は日本人離れした完璧な容姿をもっている。