孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない

***

 土曜日の午後一時。掛け布団を薄手の羽毛布団に変え、黒で統一された無人の寝具を眺める。毎日同じように添い寝してくる姿を思いながら、ため息が落ちた。

 入籍してから一か月が経つけれど、彼は当然のように手を出してこない。

 あたりまえだ。だって私たちは対等な取引をした契約上の夫婦で、私が求められたのはベッドを共にすることだけ。

 たしかに『手を出さない』とはっきり言われていたけれど、まさか本当に一緒に寝るだけとは……。

 ほっとする半面、なんともいえない気持ちになる。寂しいような、がっかりするような。

「私、女として魅力ないのかな」

 ぽつりと本音がこぼれて、慌てて周囲を見回す。誰もいないことを確認してほっと息をついた。

 なにを考えてるんだろう。これじゃまるで手を出されたいみたい。

 思考を振り払うように首を振ったとき、ポケットのスマホが音を立てて飛び上がった。見るとメッセージを受信している。

【大丈夫? 元気にしてる?】

 バンダナを巻いた快活な笑顔が思い出されて、はっとした。






 一階に下りると穂高壱弥がリビングのソファに腰掛けてビジネス雑誌を広げていた。今日はめずらしく仕事をしないらしい。

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