孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
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遊佐家の狭い食卓でみんなでカレーを食べているあいだも兄妹たちは騒がしかった。それでも壱弥さんは文句も言わず食事を平らげたどころか洗い物まで手伝ってくれた。
泊まっていけと言う母の申し出は全力で固辞し、彼とタクシーに乗り込み、自宅に到着すると夜の十一時を回っていた。
「お風呂、お先にありがとうございました」
「ああ」
寝室に入ると、入れ違いに壱弥さんが浴室に向かっていく。
騒がしかった実家とは打って変わって静まり返った穂高邸。寝室でベッドに腰掛けると、ぎしりと軋む音がはっきりと部屋に響いた。
壱弥さん、私の家族のことをどう思っただろう。
タクシーの車内では寝てしまってろくに話をしていない。壱弥さんも私にもたれて少し寝てしまったらしいから、さすがに疲れが出たのだろう。
枕に背中を預けながらスマホのロックを解除する。メッセージアプリの遊佐家グループの会話にはハートマークのオンパレードだ。
【おにいさま美しい】
【母さんは最初からひかりのことを信じてたわ】
言いたい放題の会話に苦笑しホーム画面に戻して、ふと思った。
あれ、もしかして、壱弥さんがお風呂から上がってきたら、この布団に入ってくる?