孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 忙しい日々を送りながらも、できる限り周囲に目を配る。私だけではなくて、今度は私の家族の気持ちにまで配慮してくれようとしている。

 ふと思う。

 仕事に情熱をもって熱心に働きつつ、家庭にも目を向けてくれる。それってすごく良い旦那様なのでは?

「そうですね。家族には……特に母親には花嫁姿を見せてあげたいという気持ちはあります」

「そうか」

 ときどき俺様っぽい言動があるけれど普段は口数が少なく、おまけに無表情で一見なにを考えているのかわからない。でも実はすごく誠実で、ふとしたときに優しさを感じる。

 この人と、ずっと一緒にいられたらいいのに。

 いつのまにかそう思ってる自分に驚く。

 ダメだ。期待なんかしちゃ。いつか壊れるとわかっている関係にのめり込むのは危険だ。

「体調はどうですか? 最近は眠れてます?」

 運ばれてきた料理を受け取りながら尋ねる。彼は私の背後にちらりと目を向けて答えた。

「六時間睡眠で落ち着いてる。最近は少しコントロールできるようになったな」

「コントロール?」

「以前はおまえの匂いを感じると猛烈な眠気に襲われていたが、最近は耐性がついたのか少し起きていられるようになった。ゆっくり眠りに落ちる感覚になったというか」

 ヒーリング音楽をかけているみたいな気持ちになる。

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