孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 そう付け足されてギュッと胸が締まった。

 それって、私といると落ち着くってこと……?

 最初に抱いた彼のイメージがいい意味で崩れ私が一方的に好意を持ち始めているだけかと思っていたけど、意外とふたりの距離は縮まっているのかな。

 彼が私の匂いに癒されるというように、私があの家に安らぎを感じるのはきっと彼の匂いのせいだ。

 大型犬に添い寝されてるみたいな安心感を得られる夜の光景を思い返す。

 これまでは私にしがみついてすぐ寝落ちしていたけれど、起きていられるようになったのなら、夫婦生活もできるということ……?

 ビールを空にして日本酒のメニューを眺める壱弥さんをそっとうかがう。

 手を出される可能性も、ある?

「おまえも飲むか?」

 メニューを差し出されてはっとした。

「たしか、酒はそんなに強くないんだったよな」

「はい、でも全然飲めないわけじゃないので……せっかくだから一杯だけ」

 露骨に視線を送ったから、日本酒が飲みたいんだと思われてしまった。熱くなっていく頬を隠すように日本酒のメニューに目を落とす。

 何を考えてるんだろう。まるで手を出してほしいみたいに。

「この『モダンせんきん』にします」

 女性にもおすすめと書かれたメニューを指さして顔を上げたとき、視界に子どもの姿が映った。

< 153 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop