孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ランドセルを背負った小学校低学年くらいの子どもが三人、入口ドアをくぐって慣れたように店の奥に進んでいく。保護者らしき姿は見当たらず、彼らは奥の個室に姿を消した。壱弥さんも子どもたちが入っていった個室をじっと見つめている。

 親と待ち合わせか、このお店の子どもたちなのか、それか従業員の子どもとか?
考えられる可能性を頭の中で挙げていると、また入口ドアを子どもが開けた。今度は中学生くらいの少年だ。彼もまた店を突っ切って個室に入っていく。

 居酒屋に集まる子どもたち。え、どういうこと?

 不思議に思っていると、おもむろに壱弥さんが立ち上がった。お手洗いかなと思ったら、レジ付近の店員に声をかける。

「私、先日お電話した穂高と申しますが」

「ああ、店長から聞いてます」

 短くやりとりをして、彼が戻ってくる。

「見学させてもらう。おまえも来るか?」

 ぽかんとしている私に気づき、彼は奥の個室を目で示しながら言う。

「ここは夕方五時から八時までの営業時間内に子ども食堂をやってるんだ。今度うちでもCSR活動の一環として取り組むことになったんで、見学させてもらう。といっても今日はついでだから簡単にだけどな」

 個室に向かっていく背中を慌てて追う。

 妙な時間に食事をすると思っていたら、仕事も兼ねていたらしい。

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