孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 企画書のページをめくってみる。ボランティアの活動内容は食事作りや配膳、子どもたちの話し相手や学習支援など多岐にわたる。イベント企画や食材調達なんかの裏方仕事もあるらしい。

 子どもたちの笑顔が咲き乱れるイメージ写真が載ったページを開いたまま、体が震えた。

「やりたい……やってみたいです」

 考えただけでわくわくする。

 私の返事がわかっていたように、壱弥さんは優しげに眉を下げた。

「そうか」

「はい。やっぱり、一日中この広い家にひとりでいると罪悪感が湧くというか、寂しいですし」

 そう言うと、彼は私をまっすぐ見てぼそりとつぶやく。

「じゃあ、つくるか」

「なにをですか?」

「家族」

「え……」

 おもむろに立ち上がると、壱弥さんは玄関脇のサロンチェアのところへ行き、ビジネスバッグからなにやら取り出して戻ってきた。その手には紺色の小さな箱が握られている。

「クリスマスプレゼントだ」

 差し出された小さな箱を受け取って、おそるおそるリボンをほどいた。中から出てきた見覚えのあるケースに、胸が高鳴る。

 いつかもらった婚約指輪と同じドーム型のケースを開いた瞬間、目の中できらきらと光が弾けた。

「これって……」

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