孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 全周にダイヤモンドが留められながらも緩やかなカーブを描いた上品なデザインのリングが台座に収まっている。

「結婚指輪だ」

 ケースには女性用と男性用の両方のリングが入っていた。華やかな女性用に比べて男性用のはシンプルなつくりになっている。

「ひかりに似合いそうだと思ったんだが……自分で選んだ方がよかったか?」

 固まってる私を見て心配そうに言う彼に、慌てて首を振った。

「いえ! 可愛いです! うれしいです!」

 クリスマスプレゼントなんて期待してなかったし、結婚指輪のことなんてそもそも忘れていた。あまりにも予想外で思考が追い付かない代わりに感情が溢れそうになる。

「すみません、びっくりして。私にはもったいないくらいです」

 涙腺が緩みそうになって必死にこらえていると、そっと手を取られた。

「なあ、撤回していいか」

 私をまっすぐ見て、壱弥さんは言う。

「あの日、手を出さないと言ったこと」

 脳裏を過ぎるのはスイートルームで初めて会った日のことだ。

 ソファに悠々と腰かけ『同衾しろ』と傲慢にも言い放った彼。

 私が断ると『一緒のベットに入るだけだ。手は出さない』とどう聞いても怪しい屁理屈を口にした。実際は有言実行だったわけだけれど。その発言を、撤回する?

「それってつまり……」

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