孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 粘膜に直に受ける刺激は強烈だった。あまりに気持ち良くて、声が勝手に漏れてしまう。至近距離に感じる壱弥さんの吐息や熱や舌の動き。ひとつひとつが私の体温を上昇させていく。

「不思議だな」

 ぽつりと声が落ちた。息を乱しながら目を上げると、端正な顔が間近に映る。

 私の唇を人差し指でそっとなぞり、壱弥さんはつぶやいた。

「甘く感じる」

 ぺろりと唇を舐められ首を縮める。ほんの少しの触れ合いで全身がぞくぞくと震えてしまう。

「ひかり」

 囁き声ですら媚薬みたいだ。

 名前を呼ばれながら文字通りの甘いキスを受ける。枕に押し付けられるようにして唇をついばまれたり吸われたり、キスの雨が止まない。やがてそれは唇から耳へ、首へ、ボタンを外されて胸もとへ。体中に伝わっていく。

「壱弥、さん」

 熱い。体のあちこちに火がついたみたい。

 私の声にならない声を聞き、彼は私を見下ろす。その上気した頬に手を伸ばした。

「好きです」

 一瞬驚いたように瞬きをしてから、壱弥さんは目を細めた。

「俺も、おまえが愛しい」

 いつも並んで寝るだけだったベッドの上でひとつになる。それは今までに感じたことのない快楽だった。とろけるほど甘いかと思えば、びりびり痺れてなにも考えられなくなる。

それはずっと探し続けていた半身に出会ったみたいに、心も体も喜びに満ち溢れる時間だった。




< 191 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop