孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 かぞく食堂が開かれてから、私はボランティアに交じって食事作りや配膳の手伝いに参加していた。カバン持ちの仕事は壱弥さんのことを知るために期間限定でやっていたことだけれど、かぞく食堂の活動は私にとってやりがいに満ちていて毎日がとても充実していた。今日みたいな特別な日ですら手伝いに来てしまうくらい、私にとってなくてはならない場所になりつつある。

 でも、あんまり無理しちゃいけないな。

 車窓を流れる景色を眺めながら、なんともいえない幸福感が込み上げて目をつぶった。

 気が付くとタクシーは会場に到着していた。慌てて支払いを済ませ、会場スタッフに案内されるままドレスアップとヘアメイクを終える。

 着飾った私を見た壱弥さんが無表情なのは想定の範囲内だった。わずかに眉を下げ口角を上げてくれただけでも大きな変化だ。

 わかる人にしかわからない優しい表情に胸がいっぱいになる。むしろ同じように支度を済ませた壱弥さんの方がどこぞの王子様かと思うほど美しかった。

 そんなふうに眉目秀麗で何事にも動じない彼に、私は一世一代の大勝負を仕掛けるつもりだった。

 その名も、壱弥さんの無表情を崩す大作戦!

 勝負は挙式の後だ。中庭でゲストに祝福の花びらを撒いてもらうセレモニーの直前を狙う。

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