孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
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窓の外には眩しいほどの青空が広がっている。地上三十七階からの景色なんてめったにお目にかかれないのに、私の視線を強引なほど引きつけて離さないのは都心を一望できる贅沢な眺望ではなかった。
一度も足を踏み入れたことがない高級ホテルのスイートルームにたどり着いたのはたったの五分前。入室してから腰を下ろしていた座り心地抜群のソファを立ち、案内されるままリビングスペースを抜け、開かれたドアをくぐり、そして私は立ち尽くしたのだ。
「なにをしてる。早くしろ」
私を呼ぶその人は恐ろしく整った顔を静かにゆがめ、ばさりとジャケットを脱ぐ。
「早くしろと、言われても……」
部屋の真ん中に鎮座する巨大なベッドから目を離せない。大人がふたり大の字で転がっても余裕がありそうなシーツの海を背に立ち、モデルのように美しい風貌の彼はネクタイを緩めながら近づいてくる。振り返ると、ドア付近に先ほど秘書だと名乗っていた男性がひとり、心なし心配そうな面持ちで静かに立っていた。
「あの、待ってください。私、そんなつもりじゃ」
「うるさい。いいからさっさと脱げ」
今日のために着てきた一張羅のセットアップジャケットに手を掛けられ、慌てて体を引いた。
「私、本当にこんな」
「脱がないとシワに……まあいいか」