孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 まるで綿密な設計図をもとに精巧に作り上げられた人形みたい。いや、無機質な人形というよりは、二次元の世界から飛び出してきた完璧な王子様といった風貌だ。

 でも、だからといって、相手に見とれている場合ではない。

「本当に、やめてください。じゃないと警察を呼びますよ」

 驚くほどふかふかなのに程よい硬さもあるベッドの上を、よろけそうになりながらどうにか後ずさる。ポケットからスマホを取り出して突きつけると、その人――ホダカ・ホールディングスの若き社長、穂高壱弥(ほだかいちや)は表情の乏しい顔を傾けて目を細めた。

「好きにしろ」

「はい、じゃあそこをどいて……て、え」

「なんでもいいから暴れるな。時間が惜しい」

「や、ちょ」

 一気に距離を詰められたと思ったら、首筋に彼の鼻先が触れた。くすぐったさに身をよじった瞬間、腰に手を回されて身動きが取れなくなる。

「や――」

 襲われる――。

 全身に力を入れて身構えたとき、いきなり体重をかけられて押しつぶされた。

「んんんん」

 重いい、と呻き声をあげようとして、ふと気づく。私に馬乗りになっていたその人は、完全に脱力している。

「な……?」

 なに?

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