孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
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婚姻届に署名をしたその日から、穂高壱弥とベッドを共にする生活が始まった。
はじめこそ緊張したけれど、一週間も経つとだいぶ慣れた。というのも、私が眠りにつくときは大抵ひとりだからだ。
仕事が忙しい彼は帰宅が遅く、午前零時を回ることもある。たまに夜の九時くらいに帰ってきても食事をした後はパソコンとにらめっこをしていて、寝室に来るのはだいたい深夜二時を過ぎてから。
私はこの家に来てやたらと睡眠が深くなり、彼がベッドに入ってきたことに気付かないことが多い。朝起きたときにはじめて横に寝ている姿を見つける、というのが常だった。
朝六時。長年の習慣でアラームをかけなくても自然と目が覚める。
ぼんやりした視界を横に向けると彫刻のように端正な顔が目に飛び込んできて、心臓が跳ねた。同じベッドで寝ることに慣れたとはいえ、朝一番のこの瞬間だけはどうしても胸が鳴ってしまう。
目と眉の間隔が近いせいかきりりと締まった印象の目もとと主張しすぎない形の良い鼻。歪みも無駄もない完璧なバランスで配置された顔立ちは、いつまでも見ていられる。
目の下に陰ができるくらいまつ毛が長い。毎朝見てるのに、毎回新鮮な気持ちで羨んでしまう。