孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない

　ダイニングの入り口脇にあるスイッチを押すと、カーテンが自動で開いていく。中庭に面した壁一面の窓から朝の光がそそぎ、静かな部屋を優しく照らしだす。

　床が明るいグレーの大理石調になっているダイニングキッチンは、家主の寝室と同様、黒で統一されている。ビルトインのオーブンレンジに三口のガスコンロ、シンクまで真っ黒だ。壁側の戸棚横にある扉を開くと奥がパントリーになっていて、食材や調味料がストックされており、冷蔵庫もそこに置かれていた。

　冷蔵庫が見当たらずに探し回ってしまった初日を思い出しながら、広いキッチンを動き回り簡単な朝食を作る。

　ほうれん草のソテーとベーコンエッグとトースト。ワンプレートに盛り付けてコーヒー用のお湯を沸かしているとダイニングの入り口に人影が見えた。

　私と色違いのパジャマを着た穂高壱弥が大きなあくびをしながら入ってくる。目が合うと形のいい唇をぽかんと開けた。

「おはようございます。というか、まだ慣れないんですか？　もう一週間も経つのに」

　コーヒーを淹れながら半ば呆れて言うと、彼はばつが悪そうに目を逸らす。

「……いや」