孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 働いてお金を稼ぐって大変だよね、と隣の彼に心の中で頷きかける。私の場合は取り急ぎ働き口を見つけるところからだけど。

 体を極力動かさないようにしながらスマホを操作し、登録したばかりの転職サイトにログインした。このサイトには求人情報が載っているだけでなく、企業側が気になった人材にアプローチをしてくるスカウトサービスもついている。もっとも、小さな会社の事務経験しかない私にスカウトを送ってくるような企業は一社もない。

 またしてもため息が落ちた。早く仕事を決めて、お金を稼がなきゃいけないのに。

 現在高校二年生の弟には絶対に大学に行かせてあげたいし、中学三年生の妹だって志望する高校に向けて受験勉強を頑張っている。その下には来年中学生になる双子も控えているのだ。

 母も地元の会社で働いているけれど、父親がいないぶんの稼ぎは私がどうにかするしかない。だから職を失っている場合ではないのだ。

 ハローワークで渡された求職カードを見下ろしながら、ダメもとで転職エージェントにも登録しようかなと考えていると、車内アナウンスが乗り換えの駅名を告げた。

 降りなきゃ、と思いつつずしりとした肩の重みを思い出す。となりの彼は相変わらず全力で体重を預けてきている。

 全然起きる気配がないなぁ。

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