僕と彼女は共犯だった
一週間前、学年一の美少女である東山莉緒(ひがしやまりお)が死んだ。 


──『盗ってごめんなさい』

そう書かれた一枚の便箋を机の中に残して。


冒頭で学年一と言ったが、莉緒は僕等の高校で間違いなく一番の美人だったと思う。そして容姿だけじゃない。頭脳明晰で運動神経もスタイルも抜群だった。

そんな莉緒は日々、学校内外から交際の申し込みがあったようだが特定の恋人ができたという話は聞いたことがなく、学校一の美男子でも振られたと聞いたときは心底驚いた。

僕みたいに顔も身長も至って標準で、特に他人と比べて秀でたところといえば少しだけ勉強ができることくらいしか見当たらない僕なんか、莉緒に相手にされない事などわかりきっていた。でも人知れず入学してからずっと密かに莉緒が気になっていたのは事実である。

同じクラスの莉緒の姿はどんなに教室の隅に居ても、大勢でごった返す朝礼の時でもふと気がつけば目で追っていて、いつだって僕の瞳に映してしまう。


『浜野くん……私……』

あの日、彼女が屋上から飛び降りた日、最期に莉緒と会話したのは間違いなく僕だった。

『東山は悪くないよ……』

『でも……』

『大丈夫……僕らは共犯だから』

僕の言葉に、一瞬彼女が引き寄せられたように僕の瞳を真っ直ぐに見つめた。

『そうだね、ずっと共犯だよ……』

これは僕と彼女の最期の会話の一部分。

そしてこのことは僕と莉緒の一生の秘密だ。

莉緒がこの世からいなくなってしまった今、僕が口を閉ざしている限り誰も莉緒と僕の歪な関係に気づく者などいないだろう。


──そう僕らは永遠に共犯だから。







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