狼とわたあめ
その音がやけに響き、目の前の男女がこっちを向いた。
「由香里・・・」
「すすみません!お邪魔しました!」
そう言って頭を下げて一目散に立ち去った。
家まで走って帰り、自分の部屋に入ると、一気に力が抜けて床にしゃがみ込んだ。
よく考えれば分かることだったのに。
あんなに素敵な人に彼女がいないわけない。
・・・・・・綺麗な人だった。
それに比べて私は・・・・・・
黒田さんから見ても妹みたいにしか思えていなかっただろう。
普通に考えればわかる。6つも離れてるんだから。
なのに、私は何を浮かれてたんだろう。
スーッと心の熱が引いて夢から醒めていくみたいだった。
でも胸はギューッと苦しいままで、頬を伝いはじめた涙がしばらく止まることはなかった。