狼とわたあめ
「もう、全然ちがうよ!ほら、これ去年の。ゆかりは元々可愛いけどさ、この時よりまた綺麗になってるって」
亜美がスマホで撮った画像を見せてくる。
そこには、去年の夏祭りの時の私と亜美が写っていた。
確かにお互いちょっとだけ幼く見える。
でも、ちょっとだけ。
「んーまぁ言われてみれば、ね」
「でしょー?あ、ほら。もうすぐそこだよ」
亜美が指差した方を見ると、あの、わたあめの屋台が見えた。
嘘でしょ。もうこんなとこまで歩いて来てたの?
私は咄嗟に亜美の後ろに隠れた。
私たちのいる所から2軒先の屋台。
そこは相変わらず、女性客で賑わっていた。
並んでいる女性たちの目的はたぶん、わたあめではない。
わたあめを売っている"人"だ。
私も去年まで同じだったから、よくわかる。
亜美の影からそっと盗み見ると、ドキッと心臓が鳴った。
自然な黒髪メンズショートのアップバングで相変わらずかっこいいその人は、女の子にわたあめの入った袋を手渡していた。