狼とわたあめ
コロコロとすごい速さで綺麗な石畳の上を転がっていく。
慌ててその五円玉を追うと、数メートル先で今境内に入って来たばかりであろうスーツ姿の男性の革靴に五円玉がぶつかり止まった。
「っすみません!」
その場にしゃがみ五円玉を拾ったその人に急いで駆け寄る。
立ち上がったその人の顔を見て固まってしまった。
「はい」
そう言って私の前に差し出された五円玉。
数秒固まって目の前の顔を見つめてしまったが、すぐに我に返り頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!・・・あのっ、本当にすみませんでした!」
ひえ〜〜っ
この人って、狼さんだよね・・・
どこかで見て誰かに教えて貰ったあやふやな記憶だけど、はっきりと顔は覚えている。
靴に五円玉当てちゃった・・・
ドクドクドクと心臓が嫌な音をたてる。
「・・・そんな謝んなくていいから。はい。今から参るんでしょ?」
顔を上げると、五円玉を差し出したまま狼さんは少し微笑んでいた。
やば・・・・・・かっこいい・・・・・・。
って、見惚れてる場合じゃない。
「あ、ありがとうございます」
おずおずと五円玉を受け取った。
「お先にどーぞ」
狼さんは手をスッと拝殿方へ差し出す。
「あ、すいません・・・ありがとうございます」
背中に視線を感じながら、私は急いで拝殿へと向かった。