狼とわたあめ


いつものようにお参りし終わって振り向くと、少し後ろで待っていた狼さんと目が合った。 


「あ、お先にありがとうございました」

「若いのに偉いな。願い事?」

「いえ、毎月朔日参りに来てるんです。いつも見守ってくれてありがとうございますって小さい時からおじいちゃんと来てて、それで・・・。あ、でも、もうすぐ夏祭りだから、楽しくなりますようにってお願いはしましたっ」

「へぇ・・・そうか。祭りは、楽しみ?」

「はい!毎年楽しみにしてますっ」

「フッ。じゃあ、わたあめ、おすすめだよ」


そう言って狼さんは、コツコツと革靴を鳴らし賽銭箱の前へ進んでいく。


「わたあめ・・・、今度行ってみます!あの、ありがとうございました」


狼さんの背中へ向かって言うと、狼さんは顔を少しだけこちらへ向けると手を上げた。



わあー・・・狼さんと話しちゃったよ。


まだ心臓がドキドキと鳴っている。


・・・・・・わたあめか。


いつもたこ焼きとクレープで満足してたから食べたいと思ったことなかったな。眼中に無かったかも。


でもせっかく狼さんがおすすめしてくれたし、今度は食べてみようっ。


神社を出る頃にはいつも以上に次の夏祭りが待ち遠しくて仕方なくなっていた。


< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop