フォーチュンクッキー
 ずっと三人でいた高校生活。

オレはただひとりのんきに過ごしていただけなのか。


 瞬きさえも忘れて、怜とサトを見比べていた。

ずり下がったかばんを肩にかけなおす余裕なんて、どこにもあるわけなかった。



「怜っ!!」

 真震えたサトの声は一気に現実に戻す。

それをも無視するように、怜は入れ替わり扉に向かってしまった。


 サトもこれ以上追いかけられないらしい。

乱暴にガタンっと扉を閉められ、響く階段を下りる足音が次第に小さくなっていった。


 思い出が走馬灯のように駆け巡る。


 いつだってサトのことを遠巻きに見ていた自分。

するりと手の届かなくなりそうで、そんな不安から逃げていた。


 もうすこし、このままで。

何度も自分に言い聞かせていたら、高校にはいってあっさりとサトの隣をとられてしまった。


だけどそいつは底抜けに明るくて、それすらも許したくなっていた。


 ……満足なんて、いつもしていたわけじゃない。

だけど納得できないといって、自分からなにかしようともしていなくて。


 未練ばかりにとらわれていたオレに、ツケがまわってきたんだ。




「……太一?」


 真っ赤な頬と目で覗き込んできたサトは、やっぱりオレのマグカップと同じだ。


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