フォーチュンクッキー
 予鈴が鳴り始め、グランドでは一斉に校舎に駆け込む様子が視界の端っこに映る。

それでもオレは動けないでいた。


屋上を吹き抜ける爽やかな風は、サトの濡れた頬を乾かそうとしていた。



「気付いてやれなくて、ごめん」


 本当に一生懸命だったのは、怜だったんだと思う。


きっとこのオレの気持ちさえも見通してた。




 じゃなきゃテストの初日にあんなこといわない。


『またもってかれるぞ』

って。


 オレがどうしたいか。

そんなの、オレしかわかるはずないよな。


 なにかのせいにしていたオレは、今、変わらなきゃいけない気がした。




「太一、あたしやっぱり……っ!」

 意を決したような強い瞳をオレに向けてきたサト。


 サトの気持ちは正直、めちゃくちゃ嬉しい。

ずっと、好きだったんだ。



 飛び付いてきたサトに腕を回してやれば、いいんだ。


 いい、はずなのに……。



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