フォーチュンクッキー
「…じゃあ、こいよ」

 そういって顎で教室の外をさした。

 コレが意味するのは、屋上。


 しぶしぶ怜が立ち上がると、オレは先を歩いた。


 遠くからこそこそと小さい声が聞こえて、正直気分はよくない。

怒鳴っても仕方ないことなんだけど。


「サト、いくぞ」

 できるだけ優しく言ったつもり。


いつもみたいに、3人で飯を食いたいじゃん。

サトは無言で小さく頷いて、かばんを持ってやってきた。




 あの響く階段を上るとすでに人はわらわらといた。

こんな天気のいい日はやっぱり外に出たくもなるのだろう。


 敷地内を示す緑色のネットの向こうにある大きな白い雲は、この季節だから今にでも雨を降らしそうだ。

さっきまでは、あんなに晴れていたのに。


 たまたま空いたすみっこに移動して、オレたちは輪になるように座り込んだ。


 怜とサトは、予想通り視線を合わそうとはしていなかった。



 温かい日差しのなか湿った風を受けて、重い口をなんとか動かした。


「怜、確かにお前の言うとおりオレはサトが好きだったよ」


 改めて言うと恥ずかしかった。


さっきは勢いもあったんだってわかる。

でも、今話しておかないときっと二の舞になるから、それだけは避けたかった。
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