フォーチュンクッキー
 顔がすこし引きつった怜は、どこか寂しそうだった。


「けどな、もう過去の話なんだよ」


 オレから見えるサトは更に俯いて、スカートの上に小さな白い手をぎゅっとこぶしを握ってた。


そんな姿も怜に見えたのか、キッと強く睨んできた。


「太一、お前…っ!」

 今にもとっかかってきそうな怜に、オレは屈しなかった。


「だけど、怜も同じくらい好きなんだよ」


 オレはきっと笑えてた。

目の前の怜は、小さく見えるほど戸惑っていたから。



「正直言うと、二人の姿は最初はキツくて不登校気味になってたけどな」


 笑い話に変えたかった。

そうじゃないと、オレたちはいつまでたってもここから進めない。


 切れそうなほど唇を噛んでいた怜が、小さく肩を震わせた。


 意外と情にもろい怜。

だから、こんなにも憎めないんだ。


「…気味じゃないだろ…」


 がくっとうなだれて、怜はつぶやいた。


「え?」

「気味じゃなくて、お前、不登校だろ」


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