フォーチュンクッキー
 まだまだ大丈夫だって思っていても、体は正直だ。


 ずっと続けてきた怜に追いつけるワケなんてなかった。

現役との差は一目瞭然。



「じゃあ、始めるぞ〜」

 怜は肩にかけたタオルで汗を拭いながら、後輩たちに指揮を取りバスケ部の活動を始めた。


 また更に走り始める怜を目で追うと、なんとか気合で立ち上がって出入り口で待つサトの元に向かった。

オレのかばんを両手で抱えて、サトは笑ってた。


昔の、好きだった頃の笑顔。

 あの昼休みが終わってから、オレたちはあのギスギスした空気がなかったようにまた元に戻った。


 サトと怜はヨリを戻すのか。

それはわからないけど、二人の問題だからオレは見守ってやりたい。


 午後の授業が終わると同時に、いつもの強引さで怜はオレを連れ出した。

 自分の部活が始まる前の体育館。

 すでに後輩たちが準備を始める中、一人練習用のシャツに着替えておきながらオレにオレンジ色で線の入ったボールを投げてきた。


「勝負しよっか?」




 きっとこの数分間で、オレと怜は吹っ切れたと思う。

全部、汗と足で吐き出した気がする。



 ずっと抱えていたジレンマ。

 案外そういうのはオレだけじゃないんだってわかったから、少し楽になったことは教えてやんない。
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