フォーチュンクッキー
 汗でびっしょりのオレは、ワイシャツもじっとり濡れていてどうにもきもちわるい。

流れる汗を濡れたシャツの袖で拭ってた。


「うわっ」


 いきなりバサッと視界が塞がれる。感触からしてタオルだ。

 サトかな。


「悪い」

 拭いながら頭からすっぽり被せられたタオルをはずす。

 すると、みたこともない女の子がいた。


 ふわふわ巻いた肩までの髪。

前髪だけは後ろに向かって小さなピンで止めて、その形のいい額を自慢するかのようだ。


「バスケできるんだ?」

 小さな花を飛ばすかのような笑顔。

 怜を先頭に走る集団は声を出しながら、入り口のちょうど反対側にさしかかっていた。


「それ使って?」

 なんだやけに笑う子だなぁとしか思えない。


ほんとオレって興味のないものはことごとく無関心なんだって実感する。


 サトの笑う顔はすぐに思い出せるのに。

 同時にチビ助も浮かんだ。


ぶんぶんと首を振って、脳内をリセットする。


最近おかしい。

なんでってくらい思い出す。


「太一、行こう?」
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