フォーチュンクッキー
 試合がハーフタイムになった瞬間、不機嫌に戻った雛太は放っておいて学生かばんを漁った。


 疲れてるから、甘いものだよね。

 あたしの唯一の自慢。


 だけど…。


「じゃぁ~ん!」


 さっきのサトさんは、小さなタッパーを太一さんに渡してた。


「ハチミツレモン、作ってきたんだ」


 満面の笑みでその蓋をパカっとあける。


「相変わらず料理うまいな、サトは」

 そういって太一さんも笑い返してた。




 そんなの、卑怯だよ。


やっと見つけたあたしのクッキーは、かばんの奥底に戻した。



「…未来」


 杏ちゃんが呟いて、あたしの肩をぽんって優しく叩いてくれた。

ぎゅっとスカートの裾を握って、その光景をみないように俯いてた。



「怜ー、サトが差し入れだって~」

 あたしは顔をぱっとあげた。


 あれれ?

太一さんにじゃないの?


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