フォーチュンクッキー
「ちょっ…、太一!?」

 ほら、サトさんだって驚いてる。


だけど怜さんたちがその周りに集まって、そのタッパーを囲み始めた。


 みんなユニフォームがぐっしょりなのに、まだ騒ぐ元気があるなんてビックリだ。


「もうっ」

 サトさんは腰に手を当てて困ってた。

そんな群れの中から太一さんはこっそり抜け出してきた。


「悪いな、チビ助」


 汗かいてるのに爽やかすぎるよ、太一さんっ!


 さっきから落ち込んだり、緊張したり心臓が忙しすぎる。

あたしは気づかれないように息を整えるのに必死だった。


「杏ちゃんもありがとうね?」


 隣の親友には名前で呼ぶのにね。

しかもちゃん付けだよ。


 なんて、ちょっとムクれてみたりした。



 あたしの気持ちなんてお構いなしに、その隣の雛太にまであの意地悪な微笑みを向けるもんだから。


「ヒナタくんも、きてたんだ?」


 わざとらしい太一さんの言葉。

案の定、雛太も雛太で反応しちゃうわけで。


「べっ、別に見たくてみてるんじゃ…!」


 さっきまであんなに興奮してみてたくせに。

っていうのは、雛太のメンツを保つためにも言わないでおいた。


 相変わらず太一さんはお腹を折り曲げて笑ってたけど。


 雛太はプイっと背を向けて歩き出した。

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