フォーチュンクッキー
 怜は強化選手とまではいかないけれど、候補に選ばれてもおかしくないのは知っていた。

一度、なんでここの高校にきたのかって聞いたこともあった。



 そんな質問に、怜は……


『一番近いからかな?うち貧乏だし、定期も高いと困るんだよね』

って嬉しそうに語ってた。



 なんとも怜らしい答えだったワケだけど。



「……出来るだけ」

「え?」


 オレの言葉に、ふわふわの耳をかけて聞き返してきた彼女。


「出来るだけ力になるよ」

 目をぱちくりとさせてから、ふっと顔を緩めた彼女。

ユニフォームなんか着なくたって、Tシャツで応援する姿を見てれば一緒にプレーしてるも同然だよ。


 そう声を掛けたかったけど、止めるかのように笛が鳴り響いた。


「太一、いくぞ!」

「わかった」


 怜に呼ばれてオレが走り出すと、背中から声が降ってきた。


「先輩、ありがとう!」


 両手をメガホンかのように口元を囲って叫ぶ彼女に、顔が真っ赤になったけど。

オレも笑って吹き飛ばす。



 身体を半分ひねって手を振り、オレはまた走り出した。
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