フォーチュンクッキー
「ヒナもなんだかんだいって、エキサイトしてたしね!」

「うっせ~な」


「わぁっ、雛太が照れてるーっ」


 そんな少年のほっぺたなんか触ってんなよ。


 走りすぎたせいなのか、口の中が血の味がする。


「まあ、少しくらいは認めてやるけどな」

「うっわ~、えっらそーに!」

「杏ちゃん、雛太っ」



 そんなに笑うなよ。



 ……―今、着くから。




 はあっ。

苦しい呼吸でも、夢中で腕に閉じ込めた。


「きゃぁっ」

 クセ毛が首元をかすめて少しくすぐったい。


背中を預けさせるように後ろから腕を回した。

息切れの中うっすら瞼をあけると、目を見開いたチビ助がオレを見上げていた。


「たっ、たっ…!」

 視界のはじっこでは両隣を歩いていたチビ助の親友たちが驚いていた。


 何やってんだよ、オレ。

 余裕なくして。



「ヒナ、いくよっ」

「ちょっ…、キョン!!」


 わりぃな。


 引きずられるように去っていった二人を横目に、ようやく腕を解放した。

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