フォーチュンクッキー
 カッカッカッ…。


 周りはすらすら解いていく。

焦りと不安で、あたしは残り時間を半分過ぎたところで問題の四分の一を終えた。


 折角、太一さんがいなくてもマスターが教えてくれたのに。

じわっと視界が歪んで、なにもなかったふりをするのが精一杯だ。

ドキドキして考えれなかったなんて、いいわけにすらなんない。


 悔しくて、今書いたところを夢中で消ゴムで消した。


だけどあまりにも強すぎたのか、手からこぼれ落ちて机から転がり落ちてしまった。



「最悪…」

 身を屈めて目だけで探してみたけど、あたしの席の周辺には見当たらない。

あまりキョロキョロしてもカンニングに間違われちゃうし。


 欲張りすぎだよって神様に言われてるみたいだった。



 太一さん。

 無性に会いたい。



 あと流れるのみとなったあたしの涙が、白く滲んできた。

コン、とこっそり机に真っ白の消ゴムが左から渡される。


「ヒナ…?」

 小さく呟いた。

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