フォーチュンクッキー
でも、何事もなかったように雛太はテストに向かう。
そんな小さな優しさが、今のあたしを支えてくれた。
「ありがと」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、ようやくあたしは目の前の問題に集中できた。
開始から一時間弱。
それが終わると同時にあたしも書き終えた。
見直しができなかったけど、ここまでたどり着いたから達成感だけは人一倍だ。
回答用紙が回収されていくなか、あたしはそわそわと消ゴムを探す。
「どこいったんだろう?」
スカートの裾を床につけないように膝の下に挟み込んでしゃがんだ。
先生が教室を後にして、みんなはもう次の教科の準備を始めているっていうのに。
「消しゴムく~ん」
あたしの小さな呼び声は、きっと届いていないんだけど。
そんな時、くいっと後ろから左の毛先をひっぱられる。
「いたっ」
おもわずバランスを崩して、コテンとしりもちをついてしまった。
引っ張られた方を見上げると、そこはさっきまで隣の席にいた雛太だ。
「それ、使ってていいから」
蛍光灯の逆光で少し影がかかってたけど、はにかんでいたのがうっすら見えた。
なんだか美術の教科書に出てくるモデルみたいで、すこし胸がドキンと跳ねた。
雛太のこういう顔、みたことないよ。
きょとんと雛太は見下ろして「次、はじまるぞ」とぶっきらぼうに席に戻る。
まだドキドキが止まないあたしを現実に戻すように、校内にチャイムが鳴り響いたのだった。
そんな小さな優しさが、今のあたしを支えてくれた。
「ありがと」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、ようやくあたしは目の前の問題に集中できた。
開始から一時間弱。
それが終わると同時にあたしも書き終えた。
見直しができなかったけど、ここまでたどり着いたから達成感だけは人一倍だ。
回答用紙が回収されていくなか、あたしはそわそわと消ゴムを探す。
「どこいったんだろう?」
スカートの裾を床につけないように膝の下に挟み込んでしゃがんだ。
先生が教室を後にして、みんなはもう次の教科の準備を始めているっていうのに。
「消しゴムく~ん」
あたしの小さな呼び声は、きっと届いていないんだけど。
そんな時、くいっと後ろから左の毛先をひっぱられる。
「いたっ」
おもわずバランスを崩して、コテンとしりもちをついてしまった。
引っ張られた方を見上げると、そこはさっきまで隣の席にいた雛太だ。
「それ、使ってていいから」
蛍光灯の逆光で少し影がかかってたけど、はにかんでいたのがうっすら見えた。
なんだか美術の教科書に出てくるモデルみたいで、すこし胸がドキンと跳ねた。
雛太のこういう顔、みたことないよ。
きょとんと雛太は見下ろして「次、はじまるぞ」とぶっきらぼうに席に戻る。
まだドキドキが止まないあたしを現実に戻すように、校内にチャイムが鳴り響いたのだった。