フォーチュンクッキー
「今日は3人で勉強します」
マスターに一言添えると、黙って笑いながらまた奥に入っていった。
「今日はありがとね、雛太」
あたしの呟きに、雛太はびっくりしてた。
「消しゴム、助かった!」
泣きそうな自分に勝てたのは、あのとき勇気と消しゴムを渡してくれた雛太だと思う。
素直に御礼を言ったら、すこし照れくさそうに鼻をかいてた。
「ほら、やるぞ」
誤魔化すかのようにおもむろに広げた教科書に目を落とす雛太に、杏ちゃんとこっそり笑った。
その瞬間だ。
後ろでカラン、と扉が開く音がした。
ゆっくり振り返ると、あたしが焦がれて止まないそのシルエット。
「太一さん!」
「…チビ助?もう来てたのか」
制服姿でやってきた太一さん。
“先生”ができないかも、って言ってくれたあのスコールの日から、太一さんはきちんと学校に行くようになった。
おかげで、なるべく早く喫茶店に来てくれるけど、たまにあたしのほうが早い日が増えた。
それでも前より楽しそうに笑う太一さんが見れてあたしは嬉しかった。
カウンター内にはいると、汗がすっと流れたたくましい腕があたしたちのカラになったグラスを下げた。
急に思い出しちゃった、試合の日、ぎゅって抱きしめられたこと。
マスターに一言添えると、黙って笑いながらまた奥に入っていった。
「今日はありがとね、雛太」
あたしの呟きに、雛太はびっくりしてた。
「消しゴム、助かった!」
泣きそうな自分に勝てたのは、あのとき勇気と消しゴムを渡してくれた雛太だと思う。
素直に御礼を言ったら、すこし照れくさそうに鼻をかいてた。
「ほら、やるぞ」
誤魔化すかのようにおもむろに広げた教科書に目を落とす雛太に、杏ちゃんとこっそり笑った。
その瞬間だ。
後ろでカラン、と扉が開く音がした。
ゆっくり振り返ると、あたしが焦がれて止まないそのシルエット。
「太一さん!」
「…チビ助?もう来てたのか」
制服姿でやってきた太一さん。
“先生”ができないかも、って言ってくれたあのスコールの日から、太一さんはきちんと学校に行くようになった。
おかげで、なるべく早く喫茶店に来てくれるけど、たまにあたしのほうが早い日が増えた。
それでも前より楽しそうに笑う太一さんが見れてあたしは嬉しかった。
カウンター内にはいると、汗がすっと流れたたくましい腕があたしたちのカラになったグラスを下げた。
急に思い出しちゃった、試合の日、ぎゅって抱きしめられたこと。