フォーチュンクッキー
 教室にあがる階段を通り過ぎて、駅にある小さなコンビニのような購買部。

窓口は空いていなかったけど、向かい側にある自販機は顕在だ。


 ポケットに忍ばせていた財布から小銭を抜いて、チャリンと音を鳴らせる。


 迷わずオレはアイスコーヒー。
微糖でもないブラックだ。


「どれがいい?」

 ランプが点滅してるボタンを食い入るように見つめるチビ助。

どこからか吹いてきた風に揺れるクセ毛。


「じゃあ、これ!」


 その声にオレはびくっと手が震える。

オレの右手は、あの黒く二つに束ねられた髪に今にも触れそうな距離だった。


 無邪気に拾い上げたチビ助の手には、ロイヤルミルクティーの缶が握られていた。

宙を彷徨った手を、慌ててズボンのポケットにしまいこむ。


 一体、なにをしようとしていたんだろう…。


自分でもわからなかった。




 特別教室の校舎を一通り案内し終わる頃は、ちょうど腹も減る頃だった。


 Tシャツ姿の団体がちらほらオレたちと通りすがる。

おそらく部活も昼休憩を挟むころなんだろう。




 そんな中、くぅぅとかわいそうな音が響いた。


 後ろを振りかえると真っ赤な顔を隠すように俯いたチビ助。

無駄だと言うのに腹を押さえて必死に音を消そうとしている。


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