フォーチュンクッキー
 ぴたりととまったチビ助は聞こえていたのか。

確認なんてできるくらい余裕があったら、とっくに言っている。



 こんなオレでも精一杯なんだ。

 カッコつけたがる、どこにでもいるオトコなんだよ。




 どれくらい時間が経ったのだろうか。

ひっついた汗がひんやりと体を冷やし始めた時だった。


「たい、ち、さんー…」


 ふにゃふにゃと気の抜けたような声が響く。

 ようやくオレの腕から開放すると、脱力したような体をまだ預けていた。



「…なに」


 心臓なんて、とっくにバクバクと波打って、血管が痛いくらい。

 オレにそこまで言わせんなって。


「あたし…よく、わかんないんですけどぉ~」


 泣いてるんだか、困ってるんだか、とにかくヘンな顔をしている。

 相変わらず、おもしろいヤツだ。


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