フォーチュンクッキー
「あっ、そうだ!」
隣にある大きなかばんをごそごそと漁り、あたしは手のひらサイズの紙袋を取り出した。
ゴトンと音を立ててテーブルの上にとり出す。
すると、太一さんだけじゃなくてマスターまでも身を乗り出すようにマジマジとみつめてきた。
「な…なに、これ…」
顔が少し引きつった太一さんに、あたしは満面に答えた。
「お土産です!」
紙袋から取り出したのは、木彫りでできた猫。
細い目が愛くるしい。
若干重量感をかもし出すけれど、そのたたずまいに一目ぼれした。
なぜかちりめん柄の和服をきてちょこんと座っている姿は、あたしの心を掴んだ。
「…ま、招き猫代わりに…」
言ってて恥ずかしいことに気がつく。
そうだよ、招き猫買ってこればよかった。
太一さんのはぁーっていう深いため息はさらにあたしを恥へと駆り立てた。
「ありがとう、未来ちゃん」
喉を鳴らして笑うマスターは、やっぱりいつもの優しい笑顔だ。
ま、いっか。
あたしも誤魔化すように一緒に笑った。
「じゃあ、太一さんのも」
思い出したように、あたしは小さな紙袋をきょとんとした太一さんに手渡す。
その大きな手のひらに転がってきたのは…。
同じ姿で色がピンクなだけの、小さな鈴がついた同じ猫のストラップ。
その瞬間、マスターはお腹を抱えて笑い出した。
その優しい瞳にはうっすら涙もにじんでいる。