フォーチュンクッキー
「だ、ダメでした…?」
恐る恐る視線を上げると、呆れを通り越したのか太一さんの目尻が下がりきっていた。
「チビ助らしいよ」
それは褒め言葉なのか、ダメだしなのか、どちらにしても、笑ってくれたならあたしは十分だ。
なんだかやっと帰ってきたんだ、って気がして、安心してしまった。
そんなあたしの背後で勢いよく扉が開かれた。
少し荒い息。
振り返ると、その姿を逆光でシルエットを作り出す。
まぶしくて目をこらして確認するのに必死だった。
「未来…っ!」
その声に、ようやく気づく。
「ヒナ…?」
はあ、はあ、と苦しくなるような息遣いに、なぜだか悪寒がした。
予感とか、虫の知らせって気づけないものなのか。
神様はそういうのを、いつだって教えてくれないんだ。
「い、急いで…っ!!」
雛太の強い瞳は、あたしを凍てつかせる。
あたしの元へと駆け寄ってきた雛太は、小さな一枚の紙切れを渡してきた。
「どうしたの、雛太?」
体を句の字に曲げて、手は膝がついたまま息を整える雛太に、あたしはのんきにも尋ねる。
キッと睨み上げられると、思わずクチをつむいだ。
「いいから…!おじさんが…っ」
その言葉にゾクリと背筋に何かが通った。