フォーチュンクッキー
「…なに?」
家に着いたら、一人で迎える夜。
きっとたまらず泣いちゃうんだろうな。
だから少しでも一緒にいて、誰かのぬくもりを覚えていたい。
「あ、歩いちゃ…ダメですか?」
そんなあたしを知ってか知らずか。
「いいよ」
今の優しい声は、きっとお父さんでも勝てないよ。
いつものように手が差し出され、あたしは握り返す。
だけど、スッと太一さんの手の力が抜けてしまう。
いつもは触れるだけでドキドキするのに、今はなぜだか足りないくらい不安になる。
でもその瞬間、あたしの指と指の間に太一さんの指が絡まった。
長さの違う指が交互に連なる。
「太一さん…」
「あったかいだろ?」
少し寒かったのもバレてたのかもしれない。
「…はい」
鼓動がとくん、とくんと波打って、あったかい気持ちが体に染み込んでいく。
太一さんがいてくれて、よかった…。