フォーチュンクッキー
 おじさんはしきりにオレとチビ助を見比べていた。


 不安そうなその表情は、きっといろんな気持ちが入り混じっているのだろう。

ただ、オレのことを信用してないってわけじゃないからこうして悩んでくれてるんだ。



 …と、自信はないけど、思う。



 肩をストンと落としたように、ため息交じりのおじさんの声。



「……わかった、よろしく頼むよ、太一くん…」


 ようやく、オレはほっと胸をなでおろした。

だけどその瞬間、きらりと光るようにオレを鋭い視線をぶつけてきた。


「ただし、手を出したら承知しないよ?」


 そこは父親、ぬかりない。

 苦笑いで答えるしかなかった。


「わかってます」

 どちらからともなく笑うと、きょとんと今度はチビ助はオレたちを見比べていた。


 握っていた手がきゅっと合図するかのように力がはいったから、変わりに笑い返した。



「じゃぁオレはこれで失礼します」


「ありがとう、太一くん」



 そういってもらえるとは思わなかったから、オレは驚きを隠せないでいた。

 こういうとこ、ホント親子だよな。


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