フォーチュンクッキー
「なに…?」

 泣いてるわけ…、じゃないよな。

クイッと顎を持ち上げてやると、そこには嬉しさを貼り付けたような笑顔。



「太一さんでも不安なときあるんだ?」


 可笑しそうに少し得意げになってる。


 …ったくわかってねーなぁ。

なんて思いつつ、オレもつられて顔がほころんでいた。


「今日は店来れるのか?」

「え…っ、あ、夕方くらいには…」


 困ったように俯いて、クセ毛が揺れる。

そんな髪を何度も撫でると、恥ずかしそうに更に俯いてしまう。


「じゃあ、来るまで待ってるから」

 チビ助は一度チラリと見上げてまた下を向く。

そして、そのまま黙ってコックリ頷いた。


「またあとで」

「はい!」



 元気のいい返事にひらりと身を翻して、振り返らないように病院を出た。




 誰にも見せたくない、あんな笑顔。





 名残惜しいのは誰でもない。



 ……───このオレ、だ。

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