フォーチュンクッキー
 ……―なんて。

イケナイ妄想が脳裏をよぎったけど、慌てて打ち消す。



 何を考えているんだ、オレは…っ!!


「どうしたんですか?」

 不意のチビ助の声に心臓がドキンと勢いよく飛び跳ねる。


 ゆっくり見下ろすと、きょとんとした瞳で見つめられる。

今のオレには後ろめたすぎて直視できないでいた。


「い、いや…なんでもない」


 気を取り直すためにも、コホンと咳払いをしてオレが椅子に腰を掛ける。

慌てたようにチビ助は教科書を持ってきてテーブルに広げ始めた。


 なんとなく虫の治まりどころが悪かったけれど、次第にこの家の雰囲気にもなれ、いつしか勉強にも集中していった。


 チビ助が問題を解くスピードも、半年も経てばわかってきていた。

オレが教えるなんていい始めたのも、もうそんな前なのか。


 あのときは思ってもみなかった。

こんな関係になるなんて。



 チラリと目の前のチビ助を見ると、ぎこちない手つきでペンを回している。

いや、回りきれずにノートの上にボタリと何度も落っこちてるから、みてるだけで笑える。


「…ばかだなぁ」


 こっそり呟いたけど、それも聞こえてしまったのかチビ助は顔をあげてきた。


 なにが?って言葉が顔に書いてある。


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