フォーチュンクッキー
「いいから、続けろよ」

 って言った瞬間だ。



 ぐぅー……。


空腹を奏でる間抜けな音が静かな部屋に響いた。



 目の前には真っ赤な顔のチビ助。

かっこつけた瞬間、全部もってかれるんだよな。


 堪えきれずに笑い出してしまった。


「だ、だって……っ」

 見えるところがみるみる赤くなって、まるでリンゴだ。

たまらず、ヤリでつつかれたようにビシビシ痛くなってきたわき腹を押さえる。


「もうっ、太一さん笑いすぎー!」

 ようやくでた反抗の言葉が、これだ。


 それはオレの笑いを煽る一方なことを、きっとチビ助は気づいてない。


当の本人はパタパタと手で顔を仰いでるけど、絶対にそんなんで火照った顔を冷やせるわけがないんだ。


 そして、それに拍車を掛けるように、ついでにオレの腹まで鳴った。



 ぐう……。


 人のこといえねーな、オレも。


 一瞬だけ訪れた沈黙を嬉しそうに破ったのはチビ助。


「太一さんだってー!」

 顔を見合わせて笑いあう。

ヘンな緊張感とか、オレたちには似合わない。



< 240 / 506 >

この作品をシェア

pagetop