フォーチュンクッキー
 連れられた病室では、おじさんのベッドだけカーテンがかかっていた。

周りにも小声で挨拶をしながらカーテンに潜ると、おじさんは点滴を射たれて眠っていた。


 目の前のチビ助はくるっと振り向いて、人差し指を口許で立てた。


「しーっ」


 …なんのことかと思えば。

わかってるよ、と言わない代わりに背中を軽く押した。


 寝息を聞いてほっとしたらしく、目の前の小さな肩がため息と一緒にストンと落ちた。

そんなチビ助の頭をコツンと小突く。


 すこし嬉しそうに見上げてきたチビ助に一枚の紙を手渡す。


「文化祭?」


 かばんから取り出したのは、今日完成したばかりの文化祭のチラシ。

ぽつりとつぶやいたチビ助に頷く。


「来るだろ?」

「…は、はいっ!」


 あーあ、大きな声だしちゃったよ。


 チビ助はあわてて口を塞いでたけど、もう遅い。

落ち込みかけたチビ助をなだめるようにくしゃっと頭を撫でてやった。


「それまで、勉強頑張れよ?」

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