フォーチュンクッキー
「太一さーん?」

「しらねーよっ!!」


 なんだかやけに腹が立ってペダルを思いっきりこいだ。

チビ助は楽しそうにしてたけど、それすらも若干むかついたのはしまっておいた。


 見慣れてしまった風景を突っ切って、チビ助のアパートに到着する。

荷物を手渡すと、いつもどおりチビ助は笑って振り向く。


「太一さん今日の教科は…」


 …―そう、いつもどおりすぎて面白くない。

こんなに気にしてるのはオレだけなのか?


「……帰る」

「えーっ!?な、なんでですかぁ~」


 まだ根に持ってるなんて、気づいてないんだろうな。

 チビ助の瞳は不安で揺れていて、さっきまでのオレの嫉妬で黒くなったキモチはどこかへ吹っ飛んでしまった。


 笑っていてほしい……なんて、矛盾してるんだ。


かといってすぐに切り替えられるほどオレはオトナじゃなくて。


 チビ助の額に、軽くデコピンを食らわすともう一度ペダルに足をかける。


「…きちんと戸締まりしろよ?」


 寂しそうなチビ助の声を気にしないように、自転車を漕いだ。



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